レタスハウスでの塩類集積改善
土壌医 五十嵐学
1 取組の背景
友人の農業法人(群馬県)でのハウス栽培で、2期連続(2020年度)でレタスが収穫出来ないという話を2021年1月に聞き、現場を訪問、確認し、状況の聞き取りを行いました。
他の地区のハウスでもレタスを栽培していますが、この地区に設置されている数棟のハウスは他と比べて収穫量が上がらず、特に2棟の出来が悪く、全く収穫が出来ていませんでした。(写真1)

2019年にこの圃場を借り受けてハウスを建てたそうです。借りる以前は水稲をおこなっていたそうですが、その当時の施肥管理は不明。
圃場を借りてから土壌分析を行っていて、分析結果によって施肥設計された肥料をそのまま投入していましたが生育不良が続いている状態でした。
2 対策案と実践
対策①(2021年)
2020年度の土壌診断結果を確認すると特 に目立った数値はなかったため、圃場作り前 に使用した除草剤による影響ではないかと考 えて、堆肥を使用して微生物相を増やす生物 性の改善策を取りました(表1)。

食品残渣堆肥に米ぬか等を混ぜて再発酵さ せた堆肥を作りました(写真2)。

堆肥を使用したところと使用していないと ころで違いを見るため、2棟のハウスを使わ せていただき、一つのハウスの中で奥半分に 堆肥を入れ、手前半分は堆肥無し(二つ目の ハウスは手前側に堆肥を施用)。栽培方法は いつも通りの慣行栽培をしていただきました が、写真3の通り生育が悪く収穫まで至りま せんでした(施肥に関しては土壌診断結果か ら設計された商品、量を投入)。

堆肥を使用したところと使用していないところの生育の違いは見られませんでした。ハウス内を良く観察すると、端の方は比較 的生育が良いように感じましたので、栽培者に話しを聞いてみると、休耕時期は両サイドのビニールをめくっているという事が分かり、雨が良く当たり、塩基類が水で流されているのではないかと考えました(写真4)。

対策②(2022年)
2022年に改めて土壌診断(作土、作土下) を行ったところ表2の通り、塩基飽和度、EC値等が高く塩類集積であることが判明し ました。pHが低く硝酸態窒素の値が高いことから陰イオンの影響もかなり受けている事も考えられました。

硫酸イオンが作土で168mg/100g、作土下で は33mg/100gと高い数値を示していました。表層付近に塩基が溜っている典型的な塩類集積圃場です。除塩対策として灌水と緑肥を用いた化学性改善を行い、2種類の施策の違いによる除塩 後の数値の違いも確認をしてみようと考えま した(写真5)。

除塩を実施するにあたり次のようなメリッ ト、デメリットがあることを説明しました。 灌水による除塩は水を流すだけで良くて手 間はあまり掛からないが、今までコストを掛 けて圃場に入れた肥料成分を流してしまうので勿体ない事や環境負荷を掛けてしまう事。緑肥を使った除塩は本来生育後圃場から緑 肥を持ち出すことが基本とされているが有機 物としてすき込み、緑肥が吸い取った肥料成 分がいずれ畑に還元されることに期待が出来 る事。しかし、腐熟するまでの時間がさらに掛かってしまう事。
以前の栽培日誌を見せていただくと、pH が低かったので有機石灰を使用して矯正しよ うとしていましたが、低pHの原因が陰イオ ンの影響のためと考えて石灰は使用しません でした。
灌水は灌水ホースで約3日掛けて約20時 間散水をしました(写真左奥は前年に堆肥を 使用したので、手前側よりも若干ですが土壌 改善がされていて草が生えています。手前側 は草が生えにくいくらい塩基類が溜っている のではないかと思われます。)。
緑肥にはソルゴーを使用し、播種後約60 日間成長させてから圃場へすき込みを行いま した。もう少し成長をさせたかったのです が、ソルゴーの播種のタイミングが遅かった こと(8月20日播種)、以降の気温の下降と レタス定植のタイミングを考えて60日ですき込みました。
3 効 果
灌水ハウスの作土、作土下。緑肥ハウスの 作土、作土下の4つの土壌分析を行いました。 どれも塩基飽和度、硝酸態窒素、硫酸イオ ン、アンモニア態窒素、ECが下がりました (表3)。

pHが上がったことにより腐植に起因する と思われるCECが上昇。CECが20以上と なったので塩基飽和度の68%という数値が バランスの良い値となりました。
灌水除塩と緑肥除塩での違いとしては緑肥 除塩の方が窒素とカリウムの数値の減少が大 きく、参考書通りと実感しました。そして、 作土下まで良く吸収している事が数値として確認出来ました。
除塩後の数値を見て肥料成分がまだ十分に 残っていると判断して無施肥での栽培を提案 し、了解をもらい肥料は入れずに栽培を行い ました。 灌水除塩ハウス、緑肥除塩ハウスとも一部 生育の良くない所もありましたが、4年目に して初めて収穫が出来て、さらに無施肥によ るコスト削減も出来ました。
4 技術の確立と普及
関係者に集まっていただき除 塩による数値変化の資料を見せ て改善に至るまでの経緯を説明 しました(表4、表5)。

加えて、ここ数年での肥料高 騰もあり、必要以上に投入しな い事や緑肥を使い土壌の物理性 と化学性を改善する事、堆肥を 使って生物相を豊かにするよう な土づくりの重要性も伝えまし た。さらには、換金作物である トウモロコシを栽培することに よって、休閑期を作らずに土壌 改善が出来るということを提案 しました。
今までは施肥設計をしてもら うための土壌分析でしたが、自分達でも分析値を見て圃場の状態を把握し施肥設計をすることを勧めまし た。土壌分析資料の本来の活用方法の見直し が出来たと思っております。
過去3年収穫がゼロだった圃場から収穫出 来るような土壌改善が出来て農家さんからの 感謝が何よりも嬉しかったです。これからも 貢献出来るように日々勉強と努力をしていき たいと思いました。

出典:「作物生産と土づくり」(一財)日本土壌協会


